第14回コラム

老後の楽しみ(随想)

2024年10月13日 桝野雄義

昭和47年電気工学科卒業の桝野(旧姓山下)雄義です。今年で75歳になりました。
約20年前に会社を定年退職後、塾の非常勤講師として2年ほど中学生を教えました。塾で一斉および個別指導の数学講師として経験を積んでから家庭教師派遣会社で講師登録し家庭教師として生徒さんと共に勉強してきました。
家庭教師を始めた動機は、自分の高校時代の塾の先生のまねをしたかったからです。高校時代の私の数学の成績は惨憺たるものでしたが3年生の時に初めて塾に行き、先生のおかげで基本問題が解けるようになりました。思い返せば一斉指導とはいえ「生徒をよく見て」「必要なことを絞って」教えてもらったように思います。当時の鳥取大学の数学の入試問題は「基本重視」で試験問題が作られていたように思いました。
私が生徒さんを教える際に自分に言い聞かせているのはアーサー・ウォードの名言の日本語翻訳された一部「偉大な教師は生徒の心に火を付ける」という言葉です。今までに家庭教師として50人以上の生徒さんを教え、真に「心に火を付けられた」と思えた生徒さんは5人ほどです。私のこの実力はとても自慢できるものではありませんが、それでも生徒さんが「鳥取大学を受けてみたい」というのを聞くのは喜びです。
高校生と数学の問題に取り組んで自分が昔にした間違いを繰り返すこともあります。特に事前に十分な準備ができなくて質問されたとき、あわてて解いて昔に落ちた落とし穴にはまって恥ずかしい思いをしたことも何度かありました。それでも私の仕事や海外駐在での苦労や感動した経験を交えて若い生徒さんと会話する時間を過ごすことはとても幸福なことです。大学で大島先生が電気回路論を講義されるとき、しっかりと準備されていたことも思い出し、教える側でも「準備できるときは真面目に準備する」ように心がけています。ちなみにアーサー・ウォードの名言の「心に火を付ける」は原語では”inspire”です。日本語訳が秀逸だと思います。

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