第11回コラム

大病を患って

2023年11月9日 桝野(旧姓 山下)雄義

S47年(1972年)電気工学科を卒業しました。会社では自動車用電装品である点火装置の開発設計業務に約15年間従事しました。その後1987年に当時の西独に自動車用電装品のサービス業務で駐在し、約3年間西独を拠点に欧州全域の多くの国を飛び廻りました。サービス業務が主で営業的な商談などはなく半分が客先との付き合いの中でのサポート業務、残り半分が技術的な問題解決といった内容です。欧州では仕事はすべて英語で行うのが基本でしたが当時は駐在前の英語検定等の資格は要求されず、語学能力不十分のまま着任しました。その後1991年に電装品のリビルト(再生)事業運営のためアメリカに約7年駐在しました。リビルト事業は約15人のアメリカ人従業員をまとめ、日本との対応や技術的なサービス業務を行いました。合計10年に及ぶ海外駐在は現場の人事面での問題もあり結構苦労することが多かったです。

最初の大病は1991年、42歳でした。アメリカ着任半年で仕事上の問題が多発しストレスから夜中に十二指腸潰瘍穿孔を発症し、翌朝に大病院で緊急手術をしました。英語、特に医療関係の英語は不自由でしたが何が起こったのかはX線技師たちの会話の”perforated”(貫通した)で察することができました。英語の不自由な日本人を正しく診断し適切に開腹手術するのはさすがアメリカでした。5泊6日の入院(アメリカは入院費用が高額であり保険で認められる入院期間は短い)でしたが現地会社で入っていた保険のおかげもあり、約20万円の自己負担で済みました。

2回目の大病は2022年2月、72歳でした。当時個別指導していた受験生の指導を終えて風呂に入り湯船の底に腰を下ろした瞬間、左下顎から手を突っ込まれて心臓を掴まれたような痛みとそれが下に移動する感じがしました。慌てて風呂から上がり布団に入りましたが痛くて眠れず翌朝診療所に駆け込みました。診療所でCT検査などをしてすぐに救急車で大病院に搬送され、病院到着後、新型コロナの検査を経てCT検査で大動脈解離(スタンフォードA型)と診断され緊急手術となり、幸運にも一命をとりとめました。ICUの2週間を含め1か月の入院で、国民健康保険の高額療養費制度で約25万円の自己負担でした。日本の国民健康保険制度のありがたさを痛感しました。

大病は以上の2回でしたが、2回とも「寝たら治るかも」という正常性バイアスが働き、病院に行くのが遅れましたが幸運にも命拾いすることができました。いずれも手術前の全身麻酔で眠りに入る前に「人間の人生はこういう終わり方をするのか」と覚悟しました。仕事の上でも海外勤務を含め私としては波乱万丈の生き方だったと思います。今は生きているうれしさに感謝の日々を過ごしています。

十二指腸潰瘍穿孔は仕事のストレスが原因だったと思います。大動脈解離は夏の農作業の疲労と血圧が高めだったのが原因と思います。皆様も健康には気配りされておられると思いますが、異常な痛み等の症状を伴う場合には救急車を呼ぶことを躊躇することなく早めの受診をお勧めします。

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